・・・・・・うっ、
何だろう・・・?
足の裏がくすぐったい・・・
「こちょこちょこちょ・・・こちょこちょこちょ・・・うふふっ♪ こちょこちょこちょ・・・」
目が覚めると制服姿の姫音が僕の足の裏をくすぐっていた。
「あっ、兄さん起きましたか? 足の裏くすぐったくて眠ってられなかったでしょ?」
姫音は悪戯をする子供のような笑みを浮かべていた。
それにここは玄関じゃなかった。
部屋の風景から姫音の部屋だと思う。
「それだけじゃありませんよ。今、兄さんはすごい格好をしてます。両手両足をベッドに拘束されて、おちんちん丸出しの全裸です♪」
げっ!? まさか・・・いや本当だ!!
僕の両腕は革製の手錠でベッドに括りつけられ、足には枷(かせ)が嵌められている。
枷はソファーのような材質でできており擦れても痛くはないが、がっちり拘束されていた。
それに僕は本当に裸だった。
「その拘束ベッド、兄さんがくすぐられるのが好きだとわかって、一晩徹夜して作り上げたんですよ。両手と両足、全然動かせないでしょ?」
僕は四肢を動かそうとしたけど、拘束具のせいで全く動く事は無かった。
これで何をされても僕は抵抗できない。
何て恐ろしいものを作り上げたんだ、姫音は・・・
「もう兄さんはお分かりでしょうけど、この状態でくすぐられると・・・こちょこちょこちょ・・・こちょこちょこちょ・・・」
姫音は僕の全身に軽く指を走らせる。
それだけで僕に耐えがたいくすぐったさが走った。
僕が四肢をバタつかせようとする、だが拘束具はそれを許さなかった。
「うふふっ♪ こんな風に兄さんは、どんなにくすぐったくても絶対抵抗できないんです。というわけで、今から兄さんを思いっきりこちょこちょしちゃおうと思いま~す」
姫音が10本の指をわきわきさせて微笑む。
そしてそのしなやかで細い指が僕に襲いかかった。
「脇のくぼみを、こちょこちょこちょ~♪ お腹、胸、こちょこちょこちょ~♪ 太ももとかくすぐられるとたまらないですよね~、こちょこちょこちょ~♪ でもやっぱり足の裏がいいですか? ほ~ら、こちょこちょこちょ~♪」
ひゃっ、あっ、ひゃはははははは~っ・・・
やっぱり姫音にくすぐられると耐えられない。
姫音の細い指がくすぐったい所を素早く、細かく這いまわる。
「あ~兄さん、またおちんちん勃ってますよ。くすぐられて気持ちいいんですね~。こんなことで勃起する何て、兄さんの特殊性癖には本当に呆れます」
僕は全裸でベッドに磔にされているため、ペニスの状態は一目瞭然だった、
姫音は勃起している僕に軽蔑の視線を投げかけた。
「少しくすぐっただけで勃起するという事は、もしかしたら、くすぐられるだけで射精しちゃうかもしれませんね。変態な兄さん?」
姫音はそう言うと自分の机から革状のペニスチューブを取りだした、
そのチューブの根元には革状のベルト、
僕はとてつもなく嫌な予感がした。
「・・・今から兄さんを【拷問】してみたいと思います。でも心配無用です。兄さんを傷つけるような事はしません。すご~く気持ちいい事ですよ」
姫音は勃起した僕のモノに黒革のペニスチューブをそっと被せ、根元のベルトをぎゅっと縛り、鍵をかけた。
ぐっ・・・!? 結構きつく縛られてる、もしかしてこれは・・・
「うふふっ・・・これはですね、【貞操帯(ていそうたい)】の一種です。貞操帯にも色々種類がありますが、兄さんに被せているのはチンポの根元を縛って、射精をできなくするタイプのものです。どんなに気持ち良くても射精はできませんよ」
聞いた事がある、ペニスの根元を縛られると男は射精できなくなるそうだ、
一部のSM風俗ではそういうプレイができるみたいだが、
今、ここで義妹にそんな事をされるなんて・・・
「さあ兄さん。気持ち良くても射精できない事がどれ程のものか、一度味わってみて下さい」
「私、今から全力で兄さんの足の裏をくすぐりますから・・・」
姫音はそう言うと片方の手で、僕の右足指を外側に押さえつけて足の裏を全開に広げる。
広げられた足の裏はくすぐられ放題だろう。
僕の足は枷が嵌められて動かせない、その上、足の指まで動かせなくなった。
「どれだけくすぐったくても、足の指一本動かせない絶望を味合わせてあげます・・・」
姫音の細い5本の指が僕の右足の裏に置かれる。
そして・・・
「せ~の、足の裏~っ・・・こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
ああ゛っ、ぎゃああああぁっ、あ゛あああああぁあああっ!!
想像を絶する姫音の足の裏くすぐり、僕は悲鳴を上げた、
僕の足の裏を、姫音の細い5本の細指が素早く、力強く、執拗にくすぐりまくる・・・!
「ほらほらっ! 足の裏くすぐったいですね! 足指のつけ根もどうですか~? こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
あ゛ああああっ、あ゛あああああぁあああっ!!
笑い声すら上げられない、出るのは衝動の叫び声のみ。
足の指を姫音に押さえられ、空いた足裏を姫音が容赦なく本気でくすぐる!
「良い声で鳴きますね、兄さん。私、もっと兄さんをくすぐってみたくなっちゃた。こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
くすぐったい、死ぬほどくすぐったい、だがそれが快感になる。
姫音の足の裏くすぐりが快感に、しかしそれは暴力のような激しい快楽。
僕は耐えきれず、強烈な射精感に襲われた! しかし・・・!
びく! びくっ! びくびくっ!
ペニスが震える、だが射精ができない、精液が貞操帯のベルトで締めあげられ出られない。
僕は悲鳴をあげる、苦悶の叫びを。
ああっ、イキたい、イキたいっ、イキたいよぉおおおおおおおっ!!
僕はペニスバンドを外そうとする、だが僕の両腕はベッドに拘束されている。
僕は四肢をバタつかせ暴れる、今すぐ射精がしたい、したいんだよっ・・・!
そんな様子を姫音はベッドの上から冷静な表情で見ていた。
「思った以上の効果ですね。これならすぐ兄さんを堕せそうです・・・」
姫音は穏やかな笑顔で微笑み、僕の顔を覗き込む。
そしてかけるのは魔性の言葉。
「兄さん、すごく苦しそうですね。私、兄さんが苦しむ姿を見てるとすごく辛いです。今から私の言う事を一つだけ聞いてくれれば、兄さんを苦しみから解放して、すごく気持ち良くしてあげますよ」
言う事を一つ聞けば苦しみから解放してくれる・・・? もしかして射精できるのか。
それに気持ち良くしてくれるって・・・
「ええ、兄さんのおちんちんを絞めつけている貞操帯を外してあげます。その後で兄さんを思いっきりくすぐって、たくさん射精させてあげますよ。足の裏だけじゃありません。チンポ何かくすぐられたらどうなるんでしょうね・・・ふふっ♪」
姫音が可愛い笑顔を向ける、ああ・・・くすぐられたい。
こんな美少女に思いっきりくすぐられて射精させられたら、すごく気持ちいいだろう。
あの姫音の細くてしなやかな指でペニスをくすぐられたら・・・僕は・・・
「兄さんが一つ教えてくれるだけでいいんです。それは・・・」
「放課後の学長室で兄さんは誰と会って、何をしていたんですか?」
姫音は怖い顔で僕を見下ろしてきた。
勘の良い姫音でも学長室で何が起こったのかわからないんだ。
それで無理やり僕から聞き出すためにこんな拷問をしてきたのか。
でもそれは教えられない、さくらさんに言われた事だ。
さくらさんのおまじないのおかげか、幸い姫音にさくらさんとの事はバレていない。
僕自身が姫音に話さない限り大丈夫なはずだ。
「・・・・・・へぇ~ダンマリですか。いい根性してますね、兄さん。もう一度さっきの喰らってみたいんですか?」
姫音は僕の左足指を外側に押さえつける、僕の左足はもう閉じる事はできない、
そして空いた姫音の手が僕の左足にかかる。
また僕の足の裏が・・・
「受けてください、足の裏くすぐり攻撃っ! ほ~らっ・・・こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
あ、あ゛ああああっ、あ゛がああああぁあああっ!!
今度は姫音の指が左足の裏を激しくくすぐる。
執拗に、巧みに、可愛い声でこちょこちょと言われながらくすぐられる。
「また兄さんのチンポが震え出しましたよ。くすぐられて気持ちいい何てヘンタイですね。こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
姫音にくすぐられながらヘンタイと言われて興奮が増す。
やっぱり姫音にくすぐられて、見下されるのが気持ちいいのか僕は・・・
「やっぱり気持ちいいんですか。マゾ! 変態! だったらもっとくすぐってあげる! こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
足の指一本も動かせない状態で姫音に足の裏をくすぐられる。
耐えがたいくすぐり快楽の波に負け、僕はまた絶頂を迎えた。
びく! びくっ! びくびくっ!
黒革のペニスチューブが激しく振れた!
あ、あ、あ゛ぁぁぁぁ・・・・・・射精できないよぉおおおおおっ!!
精液がいくら睾丸に溜まっても、貞操帯のベルトが射精を許さなかった。
そんな状態でも容赦なく姫音のくすぐりは続く。
「今、黒い棒が激しくビクンビクンなりましたよ。チンチンの中で射精したんですよね。うふふっ♪ 出せなくて残念でした。こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
出せない苦痛に悶える僕を嘲笑うように姫音は足の裏をくすぐり続ける。
天使のような可愛い笑顔を向けて、悪魔のように耐えがたい苦痛と快楽を与えてくる。
もう嫌だ、こんなに苦しい拷問は耐えられない・・・
「・・・さて兄さん、すごく苦しいですよね、射精したいですよね。だったら言ってください。学長室で何があったかを。私に教えてください、兄さん。すぐに貞操帯を外して射精させてあげます。気持ち良くしてあげます。楽になれますよ」
拷問に負けそうな僕に姫音がすかさず交渉を出してくる。
流石だよ姫音は、僕なんかじゃとても敵わない。
だけど・・・我慢するだけなら僕だって・・・
「・・・ふ~ん、兄さんあれだけ悲鳴あげてるのにまだ頑張るつもりですか・・・でもその頑張りは無駄ですよ。兄さんがさらに苦痛を味わうだけです」
姫音が足の枷に近づき、何かヒモのようなものをセットし始めた。
そして僕の足に触れたかと思うと、足の指一本一本にヒモの輪をかけていった。
「ふぅ・・・これで終わりっと、兄さん少し足の指を動かしてみて下さい。足の裏、こちょこちょこちょ~♪」
ひゃっ、はぁはああっ・・・くすぐったい・・・
足の裏を素早く姫音にくすぐられた、だがいつも反射的に閉じる足の指が動かない。
この足指にかかってるヒモのせいだ、僕の両足はヒモによって全開に広げられてしまった。
「ふふっ♪ 全然足の指、動かせないみたいですね。これで全開に広げられた兄さんの足の裏をくすぐり放題です」
「降参するなら今のうちですよ。わかりますよね、兄さん。次はくすぐったいのが右足と左足の2倍になるんですよ。射精したいけどできない苦しみは2倍以上になると思いますけど、うふふっ♪」
姫音の指が広げられた僕の右足と左足の裏にそれぞれ置かれる。
姫音の小さな両手の細い指、この指が僕に狂気的な快楽を与えてくるんだ。
くすぐったくて、苦しいけど気持ち良くて、狂いそうになる・・・
「もう一度聞きますけど、本当に話すつもりはないんですね・・・わかりました。では兄さんを吐かせるまでもっと追い詰めてあげます。私のダブル足の裏くすぐりで兄さんに何度も絶頂を味合わせてあげます」
姫音の声が真剣になる。
ついに始まる、本当の意味での「くすぐり拷問」が・・・
「いきますよ、兄さんの足の裏~っ、こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ
こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
あ、あ、がぁああっ、あ゛あああああぁああああああっ!!
死ぬほどくすぐったい、僕の足裏が5本と5本の姫音の細い指に思いっきりくすぐられる。
ヒモの輪のせいで足の指が全く動かせない、広げられた足の裏をくすぐられるだけだった。
「馬鹿ですね、兄さん。どれだけ兄さんが我慢しても、私は兄さんが学園室で何をしていたかを吐かない限り、ずっとくすぐり続けるだけですよ。ずっとず~っとね。ほ~ら、こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
あ゛ああ・・・っ、そうだ、このくすぐり拷問は全て姫音が支配しているんだ。
僕はただ姫音のくすぐりに耐える事しかできない、止めるも続けるも姫音の自由なんだ。
僕はあの時、姫音に抱きつかれて逃げられなくなったときから詰んでいたんだ。
「やっと気付きましたか。だからもう兄さんは私に話すしか選択肢は無いんです。このまま私に射精を封じられてくすぐられ続けたら、いつか気が狂って廃人になりますよ。そんなの兄さんは嫌ですよ・・・ねっ、こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
姫音が話している間も絶え間なく僕の足裏をくすぐり続ける。
僕は情けない声を上げながら姫音にくすぐられ続けるだけだった。
黒革の貞操帯を何度も震わせて。
「まあこのまま兄さんをいたぶり続けてもいいんですが、本当に苦しそう何で、次で決めてあげます。兄さんが自分から言い出したくなるほどの快楽を一気に与える事で・・・」
まだ姫音にこれ以上の快楽を与えられるのか・・・
そんな事をされたら多分僕はもう耐えられないだろう・・・
「足の裏を私の指でくすぐられてくすぐったかったですよね。でも兄さん、『爪』で足の裏を引っ掻かれた事はあります? 指でくすぐられるよりも、ずっとくすぐったいんですよ」
姫音のしなやかな細い指でくすぐられてたまらないのに・・・
姫音が足裏に指を垂直に立ててくる、まさか姫音が次にやる事って・・・
「はい、兄さんの足の裏を思いっきり私の爪でガリガリ引っ掻かいてあげます。すごく・・・くすぐったいですよっ!! それっ、がりがりがりっ♪ がりがりがりっ♪ 爪を立てて足の裏を、こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
あ゛あああああぁああああああっ!! 頭の中が真っ白になった。
姫音の爪が両方の足裏をガリガリと何度も高速で引っ掻く。
土踏まずや指の付け根のくすぐったい箇所を徹底的に爪で引っ掻かれくすぐられる。
「ほらほらほらっ! 息もできなくなるぐらいくすぐったいでしょ?
兄さんの足裏の垢をそぐようにっ! がりがりがりっ♪ がりがりがりっ♪
兄さんの特に弱い所を、こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
僕はもう声は出せず、体を痙攣させることしかできなかった。
だが姫音はそれを無視して、僕の足裏にガリガリと爪を立て刺激を与え続ける。
当然、くすぐられた快楽は相当なもので睾丸の中での絶頂は6回にも及んだ。
「うふふっ♪ また震えましたね。一体どれだけチンポの中でイったんですか? もうダメって分かってますよね。早く白状しないと廃人になりますよ。さあ早く! がりがりがりっ♪ がりがりがりっ♪ こちょこちょこちょこちょ~っ♪」
―――――っ! ――――! ――――――――っ!!
姫音のくすぐりが一瞬止まった時、僕はギブアップを宣言した。
声にならない叫びで学生室であった事を全て姫音に伝えた。
「・・・ふ~ん、さくらさんと会ったんですか。確かにそれで兄さんから情報が読み取れなかったのも納得ですね・・・」
それから姫音は何か独り言をつぶやいていたが、突然僕に近づき、小さな鍵で貞操帯のベルトを緩め、そして外した。
次に見たのは姫音の満面の笑顔だった。
「兄さん。約束通り気絶するまで、思いっきりくすぐってあげますからね♪」
姫音の10本の指が僕のペニスを囲う。
そして細くてしなやかな指がペニス全体を素早く這いまわった!
「さあ死ぬほど気持ちイイですよ~兄さんの勃起チンポを、こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
どびゅ! どびゅ! どびゅっ!
僕は噴水のごとく白濁液を解き放った。
ペニスの近くに顔を寄せていた姫音の顔にかかる。
だがそんな事は気にせず姫音は僕のペニスをくすぐり続けた。
「うふふっ♪ さくらさんからダメだって言われてたのに、私に言っちゃったんですね。こんな風にくすぐられて、私に負けちゃったんです。すごく情けない兄さん♪ こょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
そうだ・・・僕はさくらさんから姫音には黙っておくよう言われてたのに、姫音のくすぐり拷問に負けて言ってしまったんだ。
言ってはいけない事を姫音に言わされた背徳感が気持ちイイ・・・!
「それにしても、くすぐられてこんなに出すなんて。今度から兄さんをくすぐって、何か命令できそうですね。兄さんを私のくすぐり奴隷にでもしてあげましょうか? おンチンとかくすぐって、こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
僕は姫音にペニスをくすぐられて歓喜の声を上げていた。
姫音に四肢の自由を奪われ、ペニスのくすぐりの快感を受けてたまらなかった。
だが今までの激しい刺激から僕はかなり疲弊しており、次第に僕の意識が遠のく・・・
「あっ!? 兄さん気絶しそうですか? ふふっ♪ だったら兄さんに残ってる最後の体力を私のくすぐりで奪ってあげます。ブザマに気絶しちゃって下さいね♪ ・・・足の裏がいいですか? こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
僕は意識を失いながら姫音に足の裏をくすぐられて笑わされる。
姫音の意地悪な笑顔を見ていると幸せな気分になった。
「ほらっ、兄さんトドメです。義妹にこちょこちょされて情けなく気絶しちゃえ♪ こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ~っ♪」
姫音の指が全身に広がり、くすぐったさが全身に広がる。
僕は姫音の指で体力を根こそぎ奪われ意識を失った。
その瞬間、桜の花の香りがした。
「・・・に・・・にゃはは・・・、随分二人はお熱いんだね・・・」
僕の目の前に見覚えのある金髪の少女が、かなり気まずいといった様子で立っていた。
そう、今日学長室で進路の事について相談に乗ってくれた芳乃さくらさんだ。
辺り一面、秋だというのに満開の桜の木々が夜の風景を彩っていた。
夜なのに寒くもない、とは言え温かさも感じない、現実味がない不思議な空間だ。
ここは一体どこなんだろう・・・というかどうして、さくらさんが・・・?
「ん~っとね。詳しく説明する時間が無いから端的に言うと、ここはキミの夢の中。ちょっと事情があって、キミの夢の中に介入させてもらってるんだ。キミの現実の意識が途切れた瞬間を狙って、ボクがキミの夢にお邪魔した感じかな」
サラッとすごい事を言われた気がする。
というか、もしかして姫音との行為を僕が完全に気絶するまで、ずっと見られていたって事か、最悪だ・・・あんな醜態を人に見られるなんて・・・
あっ、そう言えば姫音にさくらさんの事話してしまったんだ。
何かマズイ事になってしまったんじゃ・・・
「・・・んにゃにゃっ! ・・・ま、まあアレは仕方ないよ。ボクの方こそ大変なお願いしちゃって・・・ソーリー。まあボクと姫音ちゃんの個人的な事だったから、そこまで問題にはならないと思うけど・・・」
さくらさんが気を使ってくれる。
さくらさんが姫音と面識があるなら、もしかしたら警戒されるかもしれない。
仕方の無い事かもしれないけど、姫音に白状したのは僕のミスだったな。
「んにゃ~、ボクの方こそゴメン・・・。ボクも緊急時じゃなかったら介入は控えてたんだけど、明日からまた海外に行くことになって、どうしても今日中にキミに決めてもらいたかったんだ」
確か学長室でさくらさんは何とかするって言っていたな。
それで僕が決めるってどういうことなんだろう?
「キミは昔、記憶を無くして、姫音ちゃんの記憶だけ思い出せなくなってたんだよね。それさ・・・もし思い出させてあげるって言ったらどうする・・・?」
昔の姫音の記憶。
それは僕が高熱を出して記憶喪失になった時、決して戻ることのなかった記憶。
すごく大事なことのような気がするけど、何故か思い出せない。
「お兄さんのキミは知ってるよね。姫音ちゃんってさ、すごく鋭いところがあるでしょ」
さくらさんの言う通り、姫音はまるで人の心を読んでるかのごとく鋭い時がある。
僕が密かに望んでいることを叶えてくれたり、困ってるところを助けてもらったりもした。
「姫音ちゃんはね、人の気持ちを読む事が出来るんだ。自分が望んでも、望まなくても心の声が聞こえてしまう体質なんだ」
「ボクは海外で、姫音ちゃんみたいな特殊な体質の研究に携わってるから、こういうことに詳しいんだ。でも姫音ちゃん一人だけが特別じゃない。実際、この島にもそういう不思議な「力」を持つ人は何人もいるからね」
姫音が人の心を読める事。
さくらさんから聞かされる前から何となく気づいてたことだ。
僕はどうしてか、そのことについてあまり深く考えない様にしてきた。
いや、少し違う・・・
僕が姫音の記憶や姫音の「力」について考えようとすると、決まって姫音からの妨害が入る、時には姫音自身の体を使った手段を選ばない方法で。
「・・・さっきも言ったけど、ボクは昔、姫音ちゃんと会ったことがあるんだ。その時に姫音ちゃんの「力」について教えてあげた。知ることで上手く、その「力」と向き合ってくれると思ったんだ・・・」
さくらさんが悲しそうに俯く、まるで罪人が罪を告白するように語り続ける。
「でもね。人の心って残酷なんだよ。怖いことも嫌なことも全部あるんだ。それでも姫音ちゃんは全てを受け取ってしまう。もしかしたらボクが教えなかった方が良かったのかもしれない・・・」
「きっと姫音ちゃんはすごく傷ついたと思う、怖い目にも遭ったと思う・・・・・・だからさ、キミと昔の姫音ちゃんの人間関係は、もしかしたら良好なものではなかったのかもしれない・・・」
いつも僕の身の回りの世話を笑顔でしてくれる姫音。
可憐で、優しくて、他の男子が羨む僕の義妹。
でも昔の姫音の笑顔はどうしても思い出せない。
「もしかしたらキミの思い出せない事は、本当は忘れていた方が良い事なのかもしれない。人間ってね、耐えられないぐらい辛かったり悲しかったりすると、その嫌な記憶にフタをして、記憶のずっと奥の方に閉じ込めたりする事があるんだ」
僕は時々、昔の姫音の事について思い出そうとしている。
でも激しい頭痛が起こっていつも止めてしまう。
多分、僕の無意識的な拒絶反応だろう。
「でもね、それは決してダメなことじゃない。暗い過去に囚われず、新しい自分で新しい生き方をしていく事なんだよ」
さくらさんはじっと僕の顔を見つめる。
その青く澄んだ瞳はずっと長い間、多くの人々の行く末を見てきたかのようだった。
「きっとキミは、本当の姫音ちゃんを解き放つ「鍵」だと思う。昔の姫音ちゃんと長い間、一緒に暮らしてきたキミだけができること。本当の彼女を見てきたキミだけができることだよ」
「だけど・・・もしキミが記憶を取り戻さないまま、今の姫音ちゃんとの生活を続けることを選んでも、姫音ちゃんと向き合って、彼女のありのままを受け入れてほしいんだ」
目の前にある桜の樹、大きい・・・樹齢は千年ぐらいだろうか。
さくらさんはそっと、その樹に触れた・・・
「・・・でもキミが望むなら、ボクの力でキミを過去の記憶へ繋いであげる。姫音ちゃんと過ごしてきた真実を観る事が出来る」
「キミが姫音ちゃんの記憶を取り戻したいか、今のままでいるか、キミに決めて欲しいんだ・・・!」
さくらさんの青い瞳が真っ直ぐに僕を見つめる。
僕は考える。
そして今の記憶にある一緒に過ごしてきた姫音の事を思い出す。
可愛くて、世話焼きで、いつでも僕を満たしてくれる義妹。
それは僕の理想の義妹、いつか思い描いてた僕の幻想。
それを姫音は叶えてくれていたんだ。
どうして姫音は僕にそんなことをしてくれるんだろう。
きっとその理由は僕の失った姫音の記憶にある。
今のまま僕に熱烈な奉仕をしてくれる姫音と蜜月の日々を過ごすか。
それとも・・・今の幻想を捨て真実を見るか・・・
いや・・・悩む必要なんてない・・・
僕の中ではもうとっくの昔に答えは出ているから、
だって・・・僕は・・・
「―――嫌っ!! 兄さん! 見ちゃダメっ!!」
突然、姫音の声が夜桜の森に響く、だが姫音の姿は見えない。
「・・・姫音ちゃんがキミの夢を覗いたんだよ。夢は心が思い描くものだから・・・
『同調』能力を持つ姫音ちゃんに読み取られる・・・」
さくらさんが苦々しく呟く。
その数秒後、突然、世界がぐらぐらと揺れ出し始める・・・!
夢のまどろみが消えていく感覚、まるで眠りから醒めるようだ。
「姫音ちゃんがキミを起こそうとしてるんだ! このままじゃ・・・キミが目を覚まして、この夢が消えてしまう・・・!」
散っていく桜の木々、夜の森が白い光の中に消えていく・・・
さくらさんの声や姿も次第に薄くなっていく・・・!
「考える時間が無くてゴメン・・・。でも本当に姫音ちゃんを・・・助けたいなら・・・、
ボクの・・・この手を・・・・・・」
「兄さん! 止めてっ! 見ないでっ!! 昔の私を・・・! 汚れた私を、卑しい私を、惨めな私を、どうか見ないでっ!!」
姫音の声が鳴り響く、それは悲痛な叫び声。
「私は、兄さんと一緒にいれる明日が欲しいの! ただそれだけでいいの。朝、私が兄さんを「おはよう」って言って起こして、私の作ったご飯を食べて、
一緒に登校して、帰ったら晩御飯を食べて、寝る前に兄さんに「おやすみ」を言いたい!」
「大人になっても兄さんに朝御飯を作ってあげて、「いってらっしゃい」を言って、夜遅くに帰ってきた兄さんと微笑み合いながら一緒にご飯を食べたいの! ずっと・・・兄さんの隣で、兄さんと一緒にいたいのっ!!」
「だから・・・だから、昔の私を見ないで! お願いだから、最低な私を見ないでっ!! 今の私だけ見て! 兄さんだけの私を、兄さんの理想の義妹を・・・ぐすっ・・・ひっく・・・う・・・ひっく・・・私、何でも・・・何でもしますから・・・だから兄さん・・・お願い・・・見ないで・・・」
姫音が泣いてる。
僕のせいだ・・・
僕が姫音を・・・って決めたのに・・・
あれ・・・? 僕が姫音を・・・どうするんだ・・・思い出せない・・・
どうしてだ? こんな大事なこと何で思い出せないんだ?
くそっ・・・! どうして僕はいつもこうなんだ・・・
―――バッカ野郎っ!!
姫音を泣かすな!
姫音を「守る」って決めただろっ!!
―――ピシッ、ピシ、ピシっ!!
ぐうっ・・・!! 頭が割れるように痛い。
僕の中から知らない僕の声が聞こえたと同時に。
脳の血管がはち切れそうな激しい痛みを感じた。
―――あと一日だったんだよっ!
姫音と仲直りしたあの夜、その明日から二人で歩き始められたんだ!
でも、お前は持ち堪える事ができずに・・・クソっ!
―――ピシッ、ピシ、ピシっ!!
違う僕の「声」が響くたびに激しい頭痛がした。
これは明らかな自己防衛だ。
昔の、僕ではない僕を見せないための。
多分、この先にある僕の記憶は過酷なものだ。
僕の頭痛は惨めで、無情で、残酷なものを見ないようにするためのもの。
・・・でも、そんなものは、もういらないんだ・・・!!
僕は消えていく夢の世界を一歩、また一歩、前へ進む。
―――ピシッ、ピシ、ピシっ!!
気を失いそうな激しい痛み。
でも耐える。
今度こそ、もう一度歩き始めるために・・・
「兄さんっ!! 止めてっ! 見ないで・・・! 行かないで・・・怖いのっ!! 一人になるのが! もう一人になるのは嫌なのっ!! だから兄さん・・・私を嫌わないでっ! 私を無視しないで! 私を一人にしないでっ!!」
僕はさくらさんの下へ手を伸ばす。
ごめん、姫音。
行くよ、僕は。
本当の姫音を知るためじゃなくて、『また』姫音と微笑み合えるために。
もう二度と姫音を泣かせないために。
今度こそ姫音を守れる僕になるために・・・
僕は、彼女の手を、強く掴んだ。
その瞬間、僕の意識は深い闇の中へと落ちていった。
―――翌日、朝
天気は晴天、雲一つない青空の下。
僕は通学路の並木道を歩いていた。
隣には姫音が姿勢良く、まるで淑女のような雰囲気を醸し出して歩いている。
姫音とは今朝からずっとまともに話をしていない。
少しずつ学園に向かう生徒が見えてくる。
そろそろタイムリミットかな。
「姫音・・・!」
僕は姫音に呼び掛ける。
「はい。何でしょうか、兄さん?」
艶やかな栗色髪の義妹が可憐な笑顔をこちらに向けてくる。
風が穏やかに吹いて、雲一つない青空に太陽がまぶしく輝く。
今日一日は間違いなくいい天気だろう。
すぅうううっ・・・・・・はぁあああっ・・・
心の中で大きく深呼吸を一つ。
・・・よし、言うぞ。
言ってここからまた始めるんだ。
もう一度、一歩目を踏み出そう。
立ち止ってしまったあの日の続きを。
いつか姫音と交わした「約束」を果たすために。
僕自身が「約束」を果たせる強さを持つために。
僕は真剣な顔で、姫音を見つめる。
そして、僕の想いを伝える。
―――それでは
過酷な日々の続きを始めよう。
続く